離婚を考える時に
- 離婚したい
- 夫婦の間で離婚の話をしているが,まとまらない
- まだ気持ちは決まっていないけれど,なんとなく離婚を考え始めている
- 配偶者に離婚を突き付けられたが,離婚したくない
- 配偶者が出て行ってしまった
- お互いが親権を主張し,譲らない
- 配偶者から金銭の請求を受けているが,金額が適切かわからない
- 支払われるべき金銭が支払われない
- 子どもに会わせてもらえない
離婚するには,お子様のこと,お金やその他の財産のこと,決めなくてはならないことや検討すべきことがたくさんあります。
特に,「少しだけ離婚を考えているけど,本当にするかわからない」「離婚するか迷っている」といったかたには,離婚した場合はこうなる,しない場合はこうなる,ということを相談の中でお示ししますので,お子様のことや経済的なことなどを具体的にイメージしながら離婚するかしないかをゆっくりお考えいただくとよいと思います。
実際に,2年,3年前に相談されたかたから離婚のご依頼をいただくことも少なくありませんし,状況が少しかわるたびにご相談に見えるかたもいらっしゃいます。
相談した結果「離婚をしない」という選択をすることもあるでしょう。
離婚すること/しないことを無理にすすめたり,「男だから○○しなさい」「女だから□□しなさい」というようなことを申し上げることはしませんので,ぜひ「将来に備えた相談」としても法律相談をご活用ください。
離婚の種類
協議離婚
「離婚する」ということを話し合いで決められる場合,役所に離婚届を提出することにより離婚成立となります。
お子様がいらっしゃる場合は「どちらが親権者になるか」についても同時に決める必要があります。
調停離婚
「離婚すること自体」や「どちらが親権者になるか」について争いがある場合,家庭裁判所に離婚調停を申し立て,調停の中で離婚と親権の合意ができれば裁判所で調書を作成し離婚となります。
【調停ってなに?調停をせず,いきなり訴訟はできないの?】
離婚について合意ができない場合,家庭裁判所での調停によって話し合いをする必要があります。
「離婚をしたい場合にはまず調停をしてください」と法律で規定されているためで,いきなり訴訟はできないことになっています。
これを調停前置主義(ちょうていぜんちしゅぎ)といいます。
調停は,指定された日時に裁判所に出向き,2名(男女各1名)の調停委員に夫・妻双方の話を交代で聞いてもらい,解決を目指す手続きです。
通常は,夫・妻が入れ替わりで話を聞いてもらいますので,夫婦が同席することはありません。控室も別々に用意されています。
調停の部屋に入ることができるのは,原則としてご本人と代理人に選任した弁護士のみとなりますので,ご家族などが一緒にいらっしゃっていても控室でお待ちいただくことになります。
1人で調停に臨まれるのが不安な場合は,弁護士を代理人に選任すれば調停の場で一緒に話をすることができます。
弁護士を選任することによって調停が有利に進むことも多くあります。
裁判離婚
調停でも離婚や親権の合意ができない場合,訴訟によって離婚や親権者について裁判所の判断を求めます。裁判所が離婚を命じれば離婚となります。裁判所に離婚を命じてもらうには,離婚原因があることが認められる必要があります。
【離婚原因とは 】
先に述べたように,離婚と親権について合意があれば,市役所に離婚届を提出することにより離婚成立となります。しかし,相手方が離婚することを拒絶している場合に離婚するためには裁判所に離婚を命じてもらう必要があります。裁判所が離婚を命じるのは夫婦に離婚原因があると判断する場合です。離婚原因は民法第770条で次のように定められています。
1.夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2.裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
第1項の一~四に該当しない場合、五の事由があるか否かが判断され、離婚が認められるかが決まります。
離婚に関するお金のこと
婚姻費用
別居中の夫婦において,収入の多いかた(義務者)から収入が少ないかた(権利者)に対して支払う生活費です。
婚姻費用額は裁判所や弁護士が広く用いる「婚姻費用算定表」に双方の年収を当てはめて算出します。権利者は,婚姻費用を請求するために生活費の内訳を義務者に示す必要はありません。
婚姻費用を請求しても支払われない場合,権利者は家庭裁判所に調停を申し立てることができます。(婚姻費用分担調停の申立)
未払婚姻費用をいつから遡って支払ってもらえるかについてはいくつかの考え方がありますが,多くの裁判官は「調停申立時点から」と考えています。
ですから,婚姻費用を支払ってもらっていない場合,速やかに調停申し立てをする必要があります。
【婚姻費用算定表】はこちら。裁判所のウェブサイトが開きます。
財産分与
夫婦の協力で築き上げた財産をどのように分けるかの問題で,通常は名義は関係なく2分の1ずつになるように分けます。
ご夫婦によってはほとんどの財産を夫名義になっていることがありますが,名義人ではない妻にも2分の1の権利があります。
これは妻が専業主婦であっても変わりません。「
内助の功」があるからです。
ただし,結婚前から保有していた財産や遺産分割によって取得した財産などは財産分与の対象にはなりません。
夫婦の協力によって築いた財産ではないからです。
離婚のご相談にいらっしゃる際,ご夫婦の間にどんな財産があるかとその価値を整理しておいていただければより具体的なアドバイスができると思います。
年金分割
原則として,離婚した日の翌日から2年を経過するまでは,年金分割を請求することができます。
どのような年金分割を受けられるかは社会保険事務所に年金分割情報通知書の交付を請求することにより知ることが出来ます。
慰謝料
離婚に際して精神的に傷つけられたことを金銭評価し,賠償してもらうことです。
例えば配偶者が不貞(不倫)をした場合や配偶者から暴力を受けたような場合に支払いが認められます。
ただし,相手方が不貞や暴力の事実をしたことを認めない場合は,慰謝料を請求する側で不貞や暴力があったことを立証(証拠を示して証明すること)する必要があります。
モラハラや言葉の暴力(暴言)は,証拠が十分にないなどの理由で慰謝料の支払いを求めるのは困難なことがあります。
子どものこと
未成年のお子様がいらっしゃる場合には,次のことも検討する必要があります。
親権
親権は親が離婚する場合に,実際に子の面倒を見たり,子に関する重要事項を決定する権利と義務をいいます。
どちらが親権者になるかについて夫婦間で合意があれば,裁判所は特に判断を示しません。どちらも親権者になりたいと主張する場合には離婚調停の中で協議します。調停で合意出来なければ離婚訴訟を提起し,どちらの親が親権者として適任かを判断してもらうことになります。
裁判所が親権を決める際に重視するのは今までの監護実績といわれています。父と母,どちらが中心となって育児をしてきたかが主に審査されます。また,子が高校生であるなど,子自身に判断能力があると考えられるときは,子が父母いずれのもとで生活をしたいのかという子の意思も尊重されます。
養育費
離婚した後の「子の生活費」のことをいいます。父母で養育費額について合意ができた場合は,合意書や公正証書にしておいた方がいいでしょう。
口約束だけで書面は作っていません,というケースも見受けられますが,後々不払いになった場合などに困ってしまうことが予想されます。
合意ができなければ,調停を申し立てて協議します。
その場合,養育費の額は,原則として養育費を決める時点での父母双方の年収をもとに算定されます。
その際に裁判所や弁護士が広く用いているのが「養育費算定表」です。
養育費は「子が成人に達する時まで支払う」と決められることが多いですが,「子が大学を卒業するまで」と決められることもあります。
養育費の額が調停で合意できない場合,調停は審判手続きに移行し,裁判所が決定します。
いずれの場合も,将来の収入の増減を予測して養育費を決めることはせず,養育費算定の基礎となった事情(収入の額など)に変化が生じれば,額を変更したい方がその時に改めて調停を申し立て,養育費の額の増減を求めることになります。(養育費増(減)額調停の申立)
【養育費費用算定表】はこちら。裁判所のウェブサイトが開きます。
養育費が支払われない場合
父母双方の同意がある場合を除き,養育費の一括払いを求めることはできません。
毎月の支払いを待つ必要があります。
養育費の支払いは長期間に及びますので,支払いが止まってしまうことがあります。
支払いが止まってしまった場合、養育費の支払いが公正証書や調停調書・判決書で定められていれば,相手方の給与差し押さえなど強制執行手続きをとることが出来ます。
また,調停調書で決めた場合,裁判所に申請をして履行勧告や履行命令を出してもらうことができます。
面会交流
子と離れて暮らす親は,子と面会することを求めることが法律上認められています。
これは,離婚前の別居状態でも同じです。
面会をしたいと申し入れたにも関わらずそれが拒絶された場合には,子との面会を求めて調停を申し立てることができます。(面会交流の調停申立)
調停でも合意できない場合,審判手続きに移行し,裁判所が①面会を認めるか,②認めるとしてその内容はどのようなものかを審判という形で判断します。
稀に「今は子との面会を控えてもらう必要がある」と判断されると面会が制限されることがあります。
裁判となりますと,厳格な形式を要求される訴状を作成し、証拠も提出しなくてはなりません。
弁護士にご依頼いただいた場合,これらの作成を全て弁護士が行います。
また,「離婚をしたくない」という方が離婚訴訟を起こされてしまった場合には,きちんと反論して,離婚にならないようにしなくてはなりません。
弁護士にご依頼いただいていればこの反論も弁護士が行います。
お問い合わせはこちら
営業時間:月~金 9:00~18:00